ケンシロウとラオウの戦いのために、リュウガはどちらに付いたか
ケンシロウは愛情を、ラオウは命懸けの戦いを市民に教える
この乱世においては、ケンシロウとラオウのいづれが時代の大黒柱として選ばれるべきか。
今まさに天下分け目の、ケンシロウ対ラオウの命運を賭けた戦いが着目されていくところではありますが、この時点ではいかにも行く先が見えない両者の勝負を、どの様にして見極めるかが問われていました。
そのためにも、孤高の視点に立ってこの戦いの展開を見極めようとしていたリュウガにとっては、両者それぞれの決定的な場面を目の当たりにすることになりました。
ケンシロウとラオウの、それぞれが一般市民に対して、どんな姿勢を示すか、という事を、リュウガは隈なく見抜いていたようです。
まずはケンシロウですが、ある時野党に襲われかけ踏みつぶされそうになった親子三人を危機一髪で救い出し、その光景を目の当たりにした両親は、むしろケンシロウに対してその第一印象から恐怖のあまり命乞いをしました。
「ほしいものは何でも差し上げます」と嘆願する両親のその恐怖心とは裏腹に、何とその物心がまだまだつかないような年端もいかぬ子供が、自分達の命を救ってくれたケンシロウの方へと歩み寄っていったのです。
つまりまだ世の中の本当の穢れというものを知らないがゆえに、むしろケンシロウの意思を純粋かつ的確に見抜いていたと考えられます。
対するラオウ側としては、部下が侵略した村に対しいくら暴虐を働いても抵抗せずにむしろ頭を下げてくる、そんな様子に不気味さすら隠せなかったようです。
その村人達は終始笑顔で、ラオウとその一味に対してはあくまで一切の戦いを放棄して「無抵抗」に徹していました。
なぜならその村の長いわく、「抵抗はむしろ余計に相手の憎しみを生むだけである」とばかりに、ラオウに対しても温厚を貫こうとしていました。
にもかかわらずラオウはその村の子供のうちの一人を持ち上げると、「この拳王に対する恐怖を乗り越えるには、あくまで命懸けの抵抗と武力のみである」とばかりにあくまで戦いこそが人間の価値であるとの教えを説いていました。
果てはラオウに対して終始笑顔で全ての力を放棄して立ち向かおうとしていた長老までもが、そのラオウの剛拳に打ち砕かれてしまったのです。
前者のケンシロウと、後者のラオウのいづれに天は味方をするのか。
その答えを見定めるべくはずのリュウガですらも、この地点では答にますます迷うようになっていたみたいです。
ケンシロウとラオウを宿命の戦いのための天秤にかけた、究極の選択
いくらケンシロウとラオウのいづれが選ばれるか答えに迷っていたリュウガとはいえ、少なくともこの凄惨な混乱の世に対して大きな苦悩を抱いていたのは間違いないと見られます。
そのためにも、まずは自分自身がケンシロウとラオウのどちら側に付くべきか、それがリュウガに与えられた一つの課題であるようにも見えました。
がしかし、というよりも実は既にリュウガとしては自らの居城にてラオウと対面した際に、ケンシロウとの戦いを望むとの意思を表明していたのです。
その戦いもまた、孤高なる天狼星を持つリュウガなりの宿命として、どのみち避けては通れなかったものでしょう。
ここで焦点となったのは、そのケンシロウとの戦いのきっかけをどこに見出すべきか。
言い換えれば、ケンシロウの資質をいかにして試すべきか。
例えば、話しは今回のタイトルとは逸れるようですが、過去にケンシロウを試した強敵の一人としては、仁星のシュウが挙げられます。
そのシュウは自らもサウザーに立ち向かうためにも軍隊を率いておりましたが、ここでケンシロウと対面した際には、真っ向からぶつかり合い戦い抜きましました。
ケンシロウとしても、この時のシュウに対する第一印象からして、当時のサウザーと同じく覇権を目指す人物であるのではないか、という事でした。
結果シュウは少年時代のケンシロウの命を救った恩人としても、ケンシロウのためにサウザーと戦い、そして凄絶な最期を遂げたものでありました。
したがって、そんなシュウの仁星の宿命とも大きく異なるリュウガとしては、その孤高なる宿命がゆえに、実は非情なる選択肢にてケンシロウの資質を試さねばならなかったのです。
遂に追い込まれたリュウガの取ったその究極の決断とは、恐るべきものでした。
ラオウに対する意思表明の通り、ケンシロウを戦いに誘うためにも、自らもまた拳王一味であることを名乗り、村を襲撃にかかったのです。
そのリュウガに襲撃された後の村を通りかかったケンシロウがまたさらに、村人からリュウガによる恐るべき証言を伝言されることになるのです。
ひとまずは今回のラオウとケンシロウのいづれか、という問いに対しては、リュウガは以上のような動機にて一旦ラオウ側の視点に立って行動を起こした、と応えるのが相応しいようです。
ケンシロウとラオウの戦いを、高い視点に立って見届けた拳士の決断力
まさにリュウガは乱世においては、高い視点に立ってみて物事を見極める役目についてはいました。
このリュウガのケンシロウかラオウか、という話題からもまた、我々は言うまでもなく決定的な学びが得られるものであります。
選択に迷い、そして時として追い込まれるような場面に差し掛かった時の決断力の在り方がまさに、このリュウガの一見非情な行動においても解読できるものであります。
ましてやビジネスなんかでもこのまさにケンシロウかラオウか、というのと同じく局面とも言える課題に出くわすこともあるでしょう。
こうして究極の決断に追い込まれた時にも、リュウガの様にそれこそ我が身を賭すような行動もまたお手本になってくれるのではないか、と考えられます。
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※以上に紹介した内容としては、「徳間書店」より2004年に初版発行されたコミックからの情報です
従って、原作とは場面が異なる場合もあります。
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