「北斗の拳」でケンシロウとユリアはラオウ亡き後、何を残したか
「北斗の拳」とはケンシロウをユリアが待ち続けた物語でもあった
「北斗の拳」の主題とは言うまでもなく、ケンシロウがラオウを倒す場面であったわけです。
またそれと同時に、かつてシンに連れ去られたユリアが、ケンシロウが強敵達との非情なる闘いを終えて帰ってくるのを待ち続けたドラマでもありました。
「北斗の拳」の英雄としてはトキもまた、病に侵されつつもユリアがかつてサザンクロスでケンシロウを待ち続けたのと同じく、カサンドラで囚われの身となって、ケンシロウと劇的な再会を果したのでした。
このユリアにせよトキにせよ、ただ単にケンシロウを待ち続けたというだけでなく、その待ち続けた動機とはどこにあったのか。
実はこのことに対する回答としては、なぜか両者ともごまかしが効かないと思うくらいに、共通点を見出せるように感じるのです。
確かにユリアとしてもトキと同じく、病に侵され余命いくばくもないほどのところまで来てはおりました。
がしかし、それにも増してユリアとしては運命に抗うことなくむしろ事の成り行きを平静を保って見据えながら、ケンシロウを待ち続けるという体勢を取ったのです。
この視点からも、「北斗の拳」のヒロインとしてのユリアは凄絶を極めた乱世においては、だからこそむしろ、時代の荒波に抗って飲み込まれることなく現実と真摯に向き合い続ける体勢を貫いたのです。
このことにより、如何なる乱世をも生き抜く揺ぎ無き生き様であったことを身を持って示したのです。
ちょうどトキがケンシロウに静よく動を制す、との戦いの姿勢と生き様を教えたていました。
ユリアもまた南斗六星最後の将として、覇道とは大きく異なる体勢にて平穏を保つことにより、ラオウ亡き後も生き残ってきたのです。
ここでまた新たに、ユリアは「北斗の拳」のヒロインとして、過酷な現実を生き延びるための教えを見出してくれたのです。
あくまでラオウやサウザーのような強大な力の持ち主ではなく、冷静に非情な現実と付き合い続けたものこそが長く勝ち残れる、というべきものでありました。
「北斗の拳」ではケンシロウとユリアの再会が、乱世平定を築いた
このことは、少なくとも「北斗の拳」の愛好家の皆さんであれば、恐らくピンと来てくれるかも知れません。
北斗神拳伝承者のケンシロウと、南斗の慈母星として乱世において平和を守り続ける宿命を持つユリアとが一体化してこそ、「北斗の拳」の物語の世界には真なる平和というものが訪れる、とされていました。
そういえば既にユリアとしては、ラオウが覇権を目指していたその間にも、南斗第6の将として自由と平等の平和の街を築いていたという事が、原作から読み取れる場面があります。
ただまた一方では、南斗五車星の雲のジュウザや炎のシュレンたちが、次々とケンシロウのためにラオウとの戦いに殉じていったのも、事実ではありました。
この展開を見て、ケンシロウは「北斗の拳」の主人公としてセコい、みたいに叩かれていたこともかすかに覚えております。
この件については、「北斗の拳」に限らずどの物語においても、例えばどうしても登場人物としてあの時こうしていればよかったんじゃないかな、という風な個人的な感覚は多かれ少なかれあることでしょう。
が少なくとも、そういう事に対して批判をしていてもまた、「北斗の拳」の物語の魅力というものが理解できずに遠のいていってしまうのではないでしょうか。
よく振り返ってみると、ラオウ亡き後もケンシロウとユリアが安住の地で休息をとっていたその数年間の間にも、「北斗の拳」の世界に平和がもたらされていたのは、実証されております。
この点に関してもまた、ケンシロウは救世主として、結果的にその後(バットとリンが成人後の、「北斗の拳2」の世界)にも乱世を平定できず、闘いをさらに拡大していっただけで何もしてくれなかった、みたいな批判めいたことを言っている人も目立つようです。
最も私から言わせると、それはあくまでもケンシロウなりの宿命であった、という事です。
いかにこの世は再び混迷の時代に突入したとはいえ、少なくともこの戦いの場面のみが「北斗の拳」の物語の全てではなかったはずです。
ただどうしても、というなら例えばユリアが病に侵されずに南斗の将として生き延びていたならば、ケンシロウの北斗神拳と共に混乱をもう少し鎮圧できていたんじゃないかな、ってところです。
従って、「北斗の拳」の物語においては、少なくともケンシロウとユリアが数年に渡ってかつての乱世を平定に導いたという真実を、あくまでありのままに受け入れるというのが、私なりの姿勢であります。
※以上に紹介した内容としては、「徳間書店」より2004年に初版発行されたコミックからの情報です 。
したがって、テレビアニメとは場面が異なる場合も少なくはないですが、紹介させていただいた原作を基に、下記より👇「北斗の拳」のテレビアニメのご視聴をいただければ、何よりかと思います。
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